化学物質過敏症


 殺虫剤や除草剤、シロアリ駆除剤、ホルムアルデヒドなど建材に使われる物質、芳香剤やたばこの煙、排ガスといった化学物質を大量に体内へ取り入れた結果、体が「過敏性」を獲得、暴露したさまざまな化学物質に反応、発症する。

 いったん過敏性を獲得すると、以後は超微量の化学物質にも反応するようになる。

 さらに花粉や動物の毛、ダニ、カビなどいわゆる化学物質以外の物質も原因になる可能性もある。

 環境病の一つともいわれ全国的に増加傾向にある。

 症状は倦怠感、頭痛、不眠、めまい、吐き気、鼻炎、精神の不安定、というように多種多彩。

 アメリカでは1990年代になって保険医療の対象になったが、わが国では、まだ社会的に認知された病気ではない。

 このような実情を打破し、広く病気の実態を訴えていこうと、96年3月には「化学物質過敏症友の会」、また同年秋には「化学物質過敏症ネットワーク」といった団体も組織され、患者同士の連携を密にするとともに、関係方面にも積極的に働きかけている。

 96年から、東京・杉並にある都の不燃ゴミ中継施設の周辺住民が集団被害を訴えている問題で、97年5月から杉並区が、化学物質過敏症の専門研究家のいる北里大学医学部に依頼、集団検珍の実施に乗り出し、これまでに20人以上がこの病気(杉並病)と診断されている。

 なお、同大学の関連施設、北里研究所付属病院(東京・港区)では化学物質過敏症を専門に診断・治環する医療施設「臨床環境医学アレルギーセンター」の建設を急いでいる。

 完成すれば、この種の疾患の専門施設としては、日本で初めてのものになる。




 シックハウス症候群

 住宅の建材や家具から発散されるホルムアルデヒドなどによる室内の空気汚染が原因で起こるさまざまな健康障害の総称。

 また新築間もない家で被害の訴えの多いことから新築病の呼び名もある。患者が急増している化学物質過敏症のなかでもとりわけ目立つものだ。

 新築だけでなく改築、改装後に入居したところ体調不良になったという訴えが多く、症状は目がちかちかする、頭やのどが痛い、吐き気がする、めまい、倦怠感、さらに肌がぴりぴりする、といった知覚異常など非常に多様である。

 ところで、建設、通産、厚生、林野の各省庁と関連事業団体で作る「健康住宅研究会」では、1998年春、健康への悪影響を減らすための「ユーザーズ・マニュアル」を作り、この症候群から身を守るよう呼びかけている。

これによると住宅建築の基本に、

1)適切な材料選択、

2)適切な施工、

3)換気・通風への配慮を挙げ、

こうしたことに配慮した設計、材料選択がされているかどうかを確認するよう強調している。

 そして、「当面、優先的に配慮すべき物質」として、

1)合板などの接着剤に使うホルムアルデヒド、

2)塗料の溶剤に使うトルエン、キシレン、

3)防腐などが目的の木材保存剤、

4)ポリ塩化ビニールなどを加工しやすくするために添加する可塑剤、

5)シロアリ被害を防ぐための防蟻(ぼうぎ)剤などを挙げて注意を喚起している。

 厚生省は97年6月、WHO(世界保健機関)の基準により、ホルムアルデヒドの室内濃度指針値を30分平均値で1m3当たり0.1mg以下にすることを決めており、これは室温23℃の下で約0.08ppmに相当する。

 ちなみに健康住宅研究会が挙げる物質と体への影響は次のようなものである。

「ホルムアルデヒド」は一般的には0.08ppm(1ppmは100万分の1)から臭いを感じ、0.4ppmぐらいで目がちかちかし、0.5ppmぐらいでのどの痛みが出る。慢性的な影響ではアレルギー症状の報告がある。

「トルエンとキシレン」は200ppm程度で倦怠感、知覚異常、吐き気が多くなる。

「木材保存剤」の有機リン系薬剤では急性中毒症状として倦怠感、頭痛、めまい、吐き気など。

 またピレスロイド系薬剤では同様に頭痛、鼻炎、くしゃみなどを起こす場合がある。

「可塑剤」の最も多用されるフクル酸ジオクチル(DOP)では1m3当たり5mgほどの濃度で目や気道に刺激を与える。

 このほか、公衆衛生関係者も特に新築後、半年は換気を頻繁に心がけることの必要性を指摘している。

「imidas'99より」
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