父親の役割


 厳格な父親は減り、子ども中心に物事を考え、子どもの要求に直ちに応じる優しい父親が増えている。

 しかし、従来から、母子のように密着した関係を作るのではなく、家庭の経済的基盤を支え、子どもの社会化を支援し、学習の男性モデルとなることが父親の役割といわれてきた。

 家族のあり方が多様化している現在、一律に父親の役割を論じることはできないが、父親の精神的不在は、子離れ、親離れのできない母子癒着や、育児ノイローゼ、また、家庭内暴力などの問題行動や心身症を発生させる誘凶となりうる。

 また、女性の就業、社会参加の機会の多い現在の社会では、父親の積極的育児参加が必須であり、父親の役割を見直さなければならなくなっている。

 母親中心の子育てには母子相互作用が重視され、父親は母子に対するエモーショナル・サポートが重要な役である。夫に妊娠の疑似体験用のジャ ケットを着てもらい、夫の家事・育児参加のきっかけにする試みも行われている。

 また、早期からの積極的な育児参加、例えば出産に立ち会ったり、だっこや沐浴、おむつ交換などにより頻繁に子どもと接触する機会をもたせれば、母親と同様父子相互作用によって、父親も父性を確立し、わが子への没入感情をもつようになる。

 この過程は、エングロスメント(engrossmentのめり込み現象)とよばれている。

「imidas'99より」
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