もちの本膳料理

 もち料理の宝庫「一関」。中でも珍しいのは結婚式や法事などにもてなすもち振舞い−もちの本膳料理で、この地方独特のものです。
 結婚式に招待した客のもてなしは「ぶっつけ本膳」といい、小豆もち、雑煮もち、くるみもち、なます(大根おろし)、なかうち(漬け物)がお膳に乗って出てくる。それぞれ3個づつ入っているので、男にとってはけっこう苦しいものがある。本格的になると2の膳に引出物としての重ねもちや蒲鉾類がつく。この膳の後に吸い物膳が出され、やっと酒をすすめられることになる。
 この方式を基本形として、簡略化する所では1の膳のみとなり、もちどころ花泉町ではあんこもちからはじまって10種類以上が一品ずつ運ばれてくるという、ヘヴィ−な餅膳もある。
 さらに、結婚式の朝には隣近所へも朝もちと称して小豆もちを重箱に入れて配る程です。
 このもちの本膳料理は不祝儀の法要や各種法事の際にも、お膳に出る事が多かった。(仏事では納豆餅は後を引くからということで出してはいけない、雑煮餅は昆布の出汁で、といわれている)
 この風習は秋田県の一部でも仏事のみ伝えられている。
 近年はさすがに家庭でのこのような風習は下火になりつつあるが、それに変わって披露宴会場などで簡略化した形で出される事がおおい。また、家庭でのもち料理も自分達で搗くよりも、搗きたてのもちを購入するほうが圧倒的に多くなっている。


資料提供:あまから亭(一関市)

ひと口もち膳

 平成3年より上記餅本膳の魅力を多くの人に味わってもらいたいと、通常三個入れる餅を小振りな1個にし、その多様さを表すために一関地方の代表的な9種類の餅ダレに絡め、一年を通じて提供しているのがふじせいの「ひと口もち膳」です。

1) 納豆もち−出来たてのもちに納豆をからめ、醤油か塩で味をととのえたもので、もち料理には欠かせない一品。男性中心に人気があります。

2) くるみもち−鬼くるみをすり水に溶き、砂糖と醤油、塩で味付けしてからめたもち。摺れば摺るほど腰の強いもちぐるみとなる。

3) じゅうねもち−えごまをすり水に溶き、砂糖と醤油で味付けしてからめたもち。胡麻よりも香りが高く、もちのなかでは最高の品。

4) あんこもち−水切りもちに粒あん、またはこしあんをからめたもち。老若男女を問わず、餅を搗いたら必ず食べる、もち料理の定番です。

5) なます−大根おろしを酢と砂糖で味を整えたもので、もちの間に頂く口直しの役割と消化を助ける役割がある。

6) ずんだもち−ゆでた枝豆をすりつぶし、砂糖と塩で味を付けからめたもち。旬のおいしさが楽しめる、仙台を中心とした、伊達領内の名物の一品。

7) しょうがもち−椎茸を千切りして醤油汁で煮て根しょうがのおろし汁と片栗粉でとろみをつけた中にからめたもち。甘味の多いもち料理の中にあって、あっさりしたもちの要。

8) ごまもち−すり胡麻をお茶でのばして香りを引き立たせ、砂糖と塩で味付けをしてからめたもち。

9) えびもち−小さな沼えびを空煎りし、醤油で味を整えてからめたもち。すり身で使うところもあります。だしと香りの格別な一品。

10) 雑煮もち−もちの締めくくりの一品。具沢山で醤油味のあっさりした汁もちです。


資料提供:三彩館 ふじせい(一関市)
※注意!この「ひと口もち膳」は三彩館ふじせいのオリジナル料理で、一関伝統の「もち本膳」ではありません。


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